戻る 目次ページに戻る
3.エチルアルコール 2000/01作成、2000/02/11第1回修正
アルコールと言えば第一にお酒の主要成分であるエタノールが思い出されるのが普通でしょう。
このエタノールはそれ故に醸造により生成できる事が広く知られていることも幸いしてエネルギー利用の期待が高いのではないかと思います。
しかしながら、木炭車の項でも述べたようにメチルアルコールの方が炭化物からの化学的な合成が容易であることから大規模にエネルギーとして利用する場合これらと比較検討を十分にするべきではないかと感じるところです。
また、エチルアルコールの合成自体も人間にとっての嗜好品としてとしては十分見返りがあるとしても、作物の栽培、収穫、醸造にはエネルギーを必要としますからその収支が取れていないことにはエタノールのエネルギー利用は無に帰してしまうことになります。
このことは、他の自然エネルギー利用にも言えることで、風車ですらコークス(石炭からの生成物)を燃やして作った鉄を用いて構造物を作るわけですからそれらも十分検討に加えなければならないところです。(鉄の生成−木炭−森林破壊はアニメ映画“もののけ姫”で投げかけられた課題の一つです。)
さて、それではエチルアコールのエネルギー収支ですが「-代替えエネルギーとしての-燃料アルコールの問題第2集」の中で日本での飲料用アルコールの1978年頃のデータとして下表のようになっています。
バイオマス |
収量
(トン/ha) |
エタノール 生産量 (l/ha) |
エネルギー収支 (103kcal/ha・年) |
産出 /投入 |
産出 |
投入 |
エタノール
| 残査
| 計
| 農業
| 転換
| 計
|
カンショ |
29.0 |
5090 |
24430 |
6170 |
30600 |
36820 |
34690 |
71510 |
0.43 |
米 |
5.25 |
2500 |
12000 |
15200 |
27200 |
54510 |
17080 |
71590 |
0.38 |
小麦 |
2.75 |
1030 |
4940 |
9170 |
14110 |
20790 |
7060 |
27850 |
0.51 |
これは、飲料用のアルコールでは高い物で0.51となり再生産が可能とは言えないところです。
燃料用の物については表には記載しておりませんが、アメリカでの検討で高い物として2.4倍があり一応のエネルギー収支は成り立っている用です。
しかしながら、個人的には各家庭で自動車を動かすには寂しい数字のように感じます。近年の技術の発達により効率的なエタノール生成も可能となっているようですが、この表から農業の投入エネルギーが大きく占められていることが示されており近年ますます多投入型の農法となっていることから産出/投入は厳しい状況になっていることが推察されます。
ちなみに、米の生産の場合
米1kgの生産に必要なエネルギー
|
産出 kcal/kg |
投入 kcal/kg |
産出/投入 |
人力のみ |
3400 |
220 |
15.5 |
機械作業 |
3400 |
2266 |
1.5 |
と、言う推計もあり米の生産時点で相当なエネルギーを投入していることが示されています。
現在の米の生産に必要なエネルギーの2/3は太陽光エネルギー(光合成)以外によるわけで、相当な部分を化石燃料に頼っていると言えるでしょう。
また、燃料として必要量アルコールを得るためには相当な耕地が必要となることでしょう。
戻る 目次ページに戻る