戻る 目次ページに戻る
6.
鉄の製造エネルギー 2000/05/20作成2000/06/08修正
別項で色々な素材の製造エネルギーについて示した所ですが、鉄については木と比較して強さや価格で鉄と競合することから更に検討してみました。
鉄は石炭(コークス)エネルギーによって酸化鉄を還元することで得られていますが、鉄の生産にたいしてどの程度の石炭が必要となるのでしょうか。
「石炭ものがたり」相原安津夫 著 青木書店P107に銑鉄1t作るのにコークスや石炭を何t必要かと言うことを示すコークス比、燃料比と言う指数が1980年前後で0.5ということで、鉄の重量にたいして半分の重さのコークス(石炭)が必要なわけです。採掘や運搬にかかるエネルギーは無視するにしてもコークスは木から木炭をつくるように石炭を熱して蒸し焼きにして得られるものですからその部分でもエネルギーが消費される分けですし、高炉に吹き込む熱風のエネルギーもいるでしょうからこの値が高炉に入れるコークスについてのみの値なのかどうか幾分疑問の残るところです。しかしながら、私の印象としては結構少ないエネルギーで生産できることに感心しているところです。
理科年表で、石炭1kg当たりの発熱量は5000〜8000kcalであり、鉄1kg得るには
0.5×1kg×5000kcal=2500kcal=2.5×103kcalで先の表に比べ1/3程度であり算出方法や加工に必要なエネルギーを考えると概ね妥当な範囲に思われます 。
一方、旧技術の“たたら製鉄"ではどうだったのでしょう。
「鉄の歴史と科学」田口 勇著 裳華房p89に“砂鉄13tと木炭13tを使用し、3日3晩かかり2.5〜3tのケラ塊を得た。"としています。
また、「世界の炭焼き・日本の炭焼き」杉浦 銀治著 牧野出版 p182で“こうして得られた玉鋼はケラの10分の1で ・・・・・・・・最初の原料の目方は皮金は5分の1、心金は3分の1となる。" と言うことで
砂鉄−ケラ−玉鋼−皮金,心金
1/5 1/10 1/3
で元の1/150となります。途中の加工にも炭がいるものの砂鉄:炭が1:1であることを考えると鉄を1得るのに炭が150必要であったと言うことになります。更にp136に“黒炭は収率20%ぐらいである" としているから鉄1得るのに750の木が必要であったと言うことになります。
これから新たに技術を構築すればコークス炉による製鉄と同等になるとすれば鉄1に対して木2.5程度に収まる可能性もありますが何ともいい難いところです。これは、最も高度な刀を作る際の話であるので普通の鉄製品では異なるかもしれません。
しかしながら、現在の製鉄技術が熱エネルギー的に大変優れた物であることを伺うところであります。
a.関連リンク
日立金属 たたら
戻る 目次ページに戻る